
皆さんもよくご存じだし、サプリメントの代表選手でもあるビタミンEについてです。ビタミンEを摂取している人の目的の多くは、メタボ対策としてのコレステロールの改善ではないでしょうか? 雑誌やネット、TVの健康番組でも「悪玉コレステロール退治にはビタミンEが一番!」なんて言葉が躍っていますよね。ところが、今日の話は、摂るビタミンEを間違えると、コレステロールを下げることができないだけでなく、コレステロールを下げるために摂るビタミンEの作用を邪魔してしまうという話です。
この図はビタミンEを構成する成分を大雑把に描いたものですが、ビタミンEの大部分は、トコフェロールとトコトリエノールによって構成されています。以前にもトコトリエノールについてはブログで紹介したことがあるので、こちらを参考にしてみてください。2002年に発表された内容では、同じビタミンEでもコレステロールを下げる作用は圧倒的にトコトリエノール(ベータとデルタ)が高く、トコフェロールには従来から言われているほどのコレステロールを下げる作用は確認できていません。それだけでなく、トコフェロールを多く含んだビタミンEは、トコトリエノールのコレステロール抑制作用に影響を与え、コレステロールを下げる機能が低下することもわかりました。最近の臨床研究によると、コレステロールや中性脂肪が高くなる脂質異常症の治療でポピュラーに処方されているスタチン系薬と一緒にトコトリエノール(ガンマ、デルタ)を摂ることで、スタチン系薬だけの患者よりもコレステロール低下の効果が高いことも報告されています。天然のビタミンEの中で、トコトリエノール(ガンマ、デルタ)を多く含む素材は、アナトー(Annatto)です。アナトーはベニノキの種子で、この種子から抽出される色素はリップクリームなど化粧品の色素として広く使われています。 このほか、ヤシの油もトコトリエノールを多く含んだ素材です。
アメリカでは市場で販売されているビタミンEのサプリメントの50%ほどは、「フルスペクトラムビタミンE」を謳った、トコフェロールとトコトリエノールを最適な比率でミックスしたサプリメントが出回っていますが、日本ではトコトリエノールのことすらあまり耳にしないのは残念です。
天然と合成のビタミンEを論点にすることは決して悪い話ではないですが、そろそそどんな目的でビタミンEを使うのかを十分考える時ではないかと思います。